研究ブログ【コラム】#222
こらむ・マグロ所長
環境問題の打開策として期待される、生分解性プラスチック
私たちの暮らしから出るゴミの多くにプラスチックが使われています。廃棄されたプラスチックは生分解性が低いため自然環境では分解されずに、さまざまな問題を引き起こしています。
海に流れてしまったペットボトルなどのプラスチックのゴミが数百年も分解されずに海に漂うといわれています。このような環境問題の打開策として期待されるのが生分解性プラスチックです。
環境問題とは
昨今よく耳にする「環境問題」。大気汚染・水質汚濁などの公害が私たちの暮らす環境の悪化となっている世界的な問題であり、地球だけではなく宇宙にも及んでいます。
日常生活に於いて、あまり関係ないと思っている方も多いと思いますが、今、私たちができることは意外と身近にあるのかもしれません。
海洋プラスチック問題
私たちが普段の暮らしで使っているプラスチック製のストロー・スプーン・袋などのゴミが海を汚染して、美しかった海がゴミにまみれた海になっている「海洋プラスチック問題」。
下水などから海に流れてしまったプラスチックのゴミは生態系に影響を及ぼし、ウミガメをはじめ多くの種類の生物が傷つき死んでいます。自然に分解されないプラスチックは「マイクロプラスチック」という目に見えない小さい粒子となり、魚が食べて私たちの身体にも取り込まれてしまいます。
今後も増え続けるゴミをどう対処していくべきか。できるだけプラスチックのゴミを減らし、使い捨てのプラスチックに替わるものを見つけて、物を捨てないで使うことが大切です。
地球温暖化
地球の温度がだんだん上がってきている現象である「地球温暖化」。このまま地球の温度が上がり続けると南極や北極の氷がとけてしまい、白熊・ペンギン・アザラシなどの動物たちが生きていけなくなります。
やがて、とけ出した氷が海に流れて海面の高さが上がってしまいます。この100年で10~20㎝の海面が高くなり、南の島が海に沈む可能性も出てきて深刻な問題となっています。2018年7月の西日本豪雨は地球温暖化が影響したものと考えられています。
地球温暖化に私たちがブレーキをかけられるのは、電気の無駄使いを減らすことです。例えば、エアコンは28℃に設定する・使わないコンセントは細目に抜くなど省エネを心掛けることが大切です。電気代の節約にもなります。
生分解性プラスチックの特徴
石油を原料とするプラスチックは、土壌で腐らずさまざまな環境問題を引き起こしていますが、生分解性プラスチックは、これまでのプラスチックと同じような機能を持ち、最後は微生物の働きで水と二酸化炭素に分解され土壌に戻るリサイクル資源で、ダイオキシンなどの有害な物質も放出しないのが特徴です。
環境問題に対する生分解性プラスチックのメリット
環境問題に対する生分解性プラスチックのメリット
オーガニックな材料で作られた生分解性プラスチックは、従来のプラスチックと同じ程度の機能を保持しながら、自然界の微生物の働きにより水と二酸化炭素に分解されるプラスチックの一つです。これまでのプラスチックの替りとなり、最終的には分解されるので海洋プラスチック問題などの解決に繋がると世界中から期待されています。
酢酸セルロース
アセチルセルロースともいわれる「酢酸セルロース」は、天然由来の歴史の古い素材から作られ、プラスチック・フィルムなどの原料になります。使用後は自然に戻るので、環境に優しい素材として注目されています。大地だけではなく、海原でも分解されます。対候性に優れ直射日光・紫外線にも強く劣化しません。
酢酸セルロースの用途
耐熱性・吸音性に優れた酢酸セルロースは、石油から作られているプラスチックに替わる素材として、さまざまな加工で包装容器・ファンデーションなどの材料・カーテン生地・塗料・液晶保護用フィルムなど広範囲に使われているプラスチック材料です。
さまざまなプラスチックの材料(プラスチックペレット)
加工性に優れた酢酸セルロースは、二次加工されやすく、従来のプラスチックの代替品としてさまざまなプラスチックの材料として使用されています。
「人魚の涙」といわれるカラフルなプラスチックペレットは、有害な物質が付着したマイクロプラスチックをエサだと思い魚や鳥が食べてしまいます。やがて食物連鎖で人間へと回ってきます。この有害なプラスチックペレットが酢酸セルロースに代替されたら、悪循環を回避できます。
レジ袋や包装容器
7月からレジ袋が優良化されました。CO2削減に繋がるバイオマスプラスチックが25%以上配合された袋を無償で配布しているお店もあります。緑色のバイオマスマークを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
カーボンニュートラルなバイオ燃料は、廃棄するときにCO2の排出削減に有効な素材で、どれだけ燃やそうとも大気中のCO2が増えることはありません。食品包装容器への導入も期待されています。
化粧品の材料
日常でメイクするメイクアップ用品にマイクロチップが使われていて、メイクを洗い流したものが海に流れて深刻な海洋汚染になっています。意外と思われる方も多いと思いますが事実なのです。
洗顔料・ボディソープ・歯磨き粉に入っている洗浄力を高めるスクラブ剤はマイクロビーズが使用されています。
世界では環境問題となっているマイクロビーズの規制が進んでいます。従来のマイクロプラスチックの代替品となる酢酸セルロースを使った化粧品の材料になっています。肌に優しい使用感ということで注目されています。
環境に優しい新資源を取り入れた生活を
物が豊な現代では使い捨てるものは多く、その全てがゴミになってしまいます。海洋プラスチック問題・地球温暖化にブレーキをかけられるのは、私たちの生活の些細なところにあります。環境に優しい長く愛用できる物を選んで、エコで経済的な生活を送りましょう。