研究ブログ【コラム】#231
こらむ・マグロ所長
不法投棄とは?過去の不法投棄事件のまとめと解説(後編)
深刻な不法投棄問題は昭和の時代から令和の現在まで、いたるところで発生し続けています。前編では1988年から2005年までの代表的な不法投棄事件の解説をしました。
後編では、2006年から2021年までの不法投棄事件について解説し、不法投棄による罰則や、不法投棄が環境に及ぼす問題点について触れていきます。
まずは2006年から2021年までの不法投棄事件について解説します。
個人の身勝手な行動が、その地域だけでなく日本全体の環境汚染につながるかもしれません。実例を見ながら環境保全について考えてみましょう。
山梨県大月市の解体工事会社が、解体後の産業廃棄物11立方メートルを、自宅の敷地及び農地に不法投棄した事件です。代表者には懲役2年(執行猶予3年)、罰金は法人に300万円、個人に100万円が言い渡されました。
山梨県内には「不法投棄監視協力員」を設置しています。「地域の環境は地域で守る」という県民の意識のもと、不法投棄の早期発見や未然防止などの対策に協力するものです。
愛知県西尾市の解体工事会社が、同市内のウナギの養殖場跡地にごみを埋めた事件です。家屋の解体工事で出たがれきや木くずなど約25トンを投棄しました。
警察の調べで、過去1年間に1800トンを不法投棄していたとして代表者を含め5人が逮捕されています。
ウナギの養殖池は1~1.5メートルの深さがあり、産廃業者にとって穴を掘らずにごみを埋められるということで悪用されるケースがあるようです。
京都の産廃業者が滋賀県大津市にある延暦寺大霊園に隣接する土地に、土砂を大量に不法投棄した事件です。約50mもの高さの残土を投棄した結果、大雨時に土砂が流出する事故が起き負傷者も出ました。
産廃業者は書類送検され許可取り消しになりましたが、その後も不法投棄は続きます。廃棄物はどんどん増え、現場は揮発性有機化合物(VOC)などにより汚染されていることが判明しました。
大津市が主導となって汚染土壌を封じ込める工事を行っていますが、汚染水が河川に流出するなど、解決に困難を極めています。
東京都の産廃処理会社が、群馬県藤岡市の造成地に大量の産業廃棄物を土に混ぜて不法投棄した事件です。世界文化遺産の高山社跡から数百メートルの場所に捨てていました。
廃棄物は主にガラスくずや木くずですが、アスベスト(石綿)などの有害物質も検出されたことで住民に不安を与えています。
産廃処理会社社長は「廃棄物ではなく残土だ」と供述し、容疑を否認しているそうです。警察の立ち入り後は一時的に止まりましたが、断続的に運び込まれていました。
不法投棄は、「廃棄物処理法違反」です。初犯であっても、投棄したものが小さなものであっても犯罪に変わりありません。不法投棄をすると、投棄物の撤去や適切な処理が命じられるだけでなく、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」により5年以下の懲役もしくは1千万円(法人は3億円)以下の罰金またはその両方を受けます。
また、不法投棄することを前提に廃棄物を収集または運搬した場合も処罰の対象です。3年以下の懲役刑もしくは300万円以下の罰金またはその両方の刑に処されます。つまり、自分自身が中心になって不法投棄をするわけではなく、手伝った場合においても罪に問われる可能性があるのです。
廃棄物の不法投棄は、環境汚染などを通じて住民の健康や暮らしにさまざまな影響を及ぼします。不法投棄された現場では、水質汚濁や土壌汚染などの環境問題を生じる場合があり、その改善に多くの時間と費用がかかるのです。
たとえば不法投棄された廃棄物に重金属や有機塩素系化合物等の有害物質が含まれている場合、雨が降ると廃棄物から有機性成分が浸み出し、河川等の水質汚濁や土壌汚染を引き起こします。
他にも、廃タイヤや木くずなど可燃性の廃棄物が多い現場では、堆積した廃棄物から火災が発生する事例が後を絶たず、近隣の家屋等への延焼の危険性、火災に伴う悪臭、ばい煙が発生します。
このように不法投棄された場所から二次被害が生まれ、どんどん被害が拡大していくのです。
不法投棄は現在もなくなっていません。不法投棄の早期発見や未然防止の対策はもちろん、一人一人が「不法投棄は犯罪である」という意識を持つことが大切です。
個人の安易な考えで不法投棄をおこなった結果、自分たちが住みづらくなる環境を生み出してしまうことを今一度考えましょう。
この地球で長く生きていくには、自然と生物の環境保護が必須なのです。